ディスパッチクレーマーレポートケア編(2014年02月号)
質問者:中学校 女子バレーボール部監督 男性
- 女子中学校バレー部の監督をしています。先日の試合でセンターの子がスパイクの着地時に相手の脚の上に着地してしまい、右足首(外側)を捻挫(2度)してしまいました。RICE処置を3日間行い、腫れも痛みも引いたので復帰に向けてリハビリとトレーニングを開始したいのですが、何の方法をどのようなで段階で行って行けば良いのか?教えてください。よろしくお願いします。
- アスレティックリハビリテーションとは、スポーツ競技復帰を目的としたリハビリテーションのことをさします。一般の人が行うメディカルリハビリテーション(日常生活で必要な機能を回復していくトレーニング。社会復帰を目的とする)より競技特性を考慮して行います。競技復帰に向けて、競技特性やポジション特性を考慮した運動機能の回復をしていきます。
今回は足関節捻挫を例にして、競技復帰に必要となる下記項目のベーシックな方法をご紹介します。
関節可動域の獲得・柔軟性の向上
ケガをした後というのは、周りの組織が硬くこわばっている状態になっています。長期間ギブスなどで固定している場合などは特に関節可動域(関節の動く範囲)・柔軟性ともに低下しています。筋力や競技技術を上げる前に筋肉の柔軟性を高め、関節を通常の動く範囲まで戻す作業が必要になります。
ストレッチ筋群→腓腹筋、ヒラメ筋、前脛骨筋、趾伸筋群
可動域向上→底屈と背屈(動画1)、内返しと外返し(動画2)
筋力の向上
ケガをした部位を動かさない期間が長くなればなるほど、筋力は低下してしまいます。ケガをする前の筋力に戻し、左右(ケガをした部位の反対の部位)差をなくすことが先決になります。そして、同じケガを繰り返さないために筋力を向上させる必要もあります。
方法→徒手抵抗(手で負荷をかける方法)→底屈と背屈(動画3)、内返しと外返し(動画4)、チューブ、ダンベル、自体重など
固有受容器
固有受容器とは、関節包、靭帯、筋、腱、皮膚などに存在し、様々な刺激を感知するセンサーの役目を担っています。筋肉や腱などが緊張しているのか、関節がどの位置にあるのかなどを感じ取っています。固有受容器は、その刺激を脳に送り、脳が筋肉に指令を出します。その結果、身体を安定させたり動かしたりすることが可能になるのです。筋力が向上しても筋と脳をつなぐセンサーの働きが悪いと、結果的に高いパフォーマンスを発揮することが難しくなってしまいます。このため、筋力を向上させるのと同時に固有受容器のトレーニング、つまり、バランス感覚を養うトレーニングが必要になります。このレーニングを怠ると競技に復帰した時に同じケガを繰りかえすリスクも高まります。
方法→開眼片足立ち、閉眼片足立ち、クッション片足立ち、アジリティディスク→片足立ち(動画5)、片足左右移動(動画6)、バランスボールなど
ファンクショナルトレーニング
文字通り「機能的な動作」のトレーニングです。競技復帰に近づくにつれて、より競技動作に近い専門性が要求されます。これは、スムーズに競技に復帰するためにも必要です。
競技に合わせたトレーニング(左右の速い移動や速い反応と動作など)をしていく際にSAQトレーニングは効果的です。※細かいトレーニング内容については、SAQ DVDブックをご覧ください。
ファンクショナル→左右サイドステップ(動画7)、前後サイドステップ(動画8)、ラダートレーニング、スティックラダー(動画9)、マイクロハードル、ミニハードルなど
※動画にある「患側」とは、ケガをした部位の側のことです。