ディスパッチクレーマーレポートトレーニング編(2011年05月号)
質問者:会社員 男性

子どもには小さい頃から、ひとつのスポーツに集中して専門的な指導受けさせた方が良いのでしょうか?
子どもの頃はひとつのスポーツに限らず、様々なスポーツや運動を行うことをおすすめします。様々なスポーツや運動を行うことで経験した動作に伴った能力が向上し、いわゆる基礎体力が構築されます。そして、競技の専門的な指導を受けるための土台が作られるのです。また、様々なスポーツや運動を行うことが障害予防に繋がることは研究によっても明らかになってきています。

日本では子ども達が複数の部活動に所属したり、種目の異なる2つ以上のクラブに参加できる環境は稀です。そのような現状を踏まえて、クレーマージャパンとNPO法人日本SAQ協会では、20年に渡り小学生以上の子供達に対してSAQトレーニング※1の普及活動を行ってきました。SAQトレーニングによって子どもの基礎体力や身のこなしを向上させることができます。現在では全国各地の小・中学校やクラブでSAQトレーニングが行われるようになってきました。

最後に選手としてトップパフォーマンスに達する年齢が早い競技について考えてみましょう。フィギィアスケートのような競技では平均して16才から20才でトップパフォーマンスに達すると言われており、他の競技と比較しても早い傾向にあります。そのため、世界のトップを目指すには、早期から専門的なトレーニングを行う必要があり、そのような選手育成をアーリー・スペシャライゼーション※2と言います。このような競技の場合には、オフシーズンのトレーニングやアクティブレスト※3の際に専門外のスポーツを行うことが望ましいですが、現状は環境に限度があるようです。今後、このような競技においてもSAQトレーニングの必要性は、さらに高まるでしょう。

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※1 : SAQトレーニング … スピード・アジリティ・クイックネスを高めるための体系的トレーニングシステム。
※2 : アーリー・スペシャライゼーション … 早期から種目を絞り専門的なトレーニングを行うこと。反対語はレイト・スペシャライゼーション。
※3 : アクティブレスト … 積極的休養と言い、軽い運動によって疲労回復を早めること。

<参考文献>
競技力向上のトレーニング戦略
テューダー・ボンパ 著 尾縣 貢、青山 清英 監訳 大修館書店