中学校や高校への入学と同時に運動部に入部し、「これから目標に向かって頑張ろう!」と強い思いを持っている人も多いと思います。しかしこの時期は、受験勉強や、春から離れ離れになる友達との思い出作りに没頭して、運動する時間が短くなり、運動選手として必要な筋力、柔軟性、持久力などの基礎体力や身体機能が低下してしまいがちではないでしょうか。そのような状態で無理をしてしまうと、入部早々にケガをしてしまう可能性も多いに考えられます。新生活と同時にスタートダッシュを決めるためにも、この時期に気をつけなければならない項目をチェックしましょう。

1.身体の特徴を理解しよう

人体の姿勢は様々です。本格的に部活動を始める前に、まずは自分の身体と向き合い、特徴を把握しておくことで、練習を重ねていく中で痛みが生じた場合、その原因をつきとめ、改善の方法を見いだすヒントにもなります。図1を参照し、身体をさまざまな方向から観察してみましょう。友達に見てもらいながら比べてみると、より自分の姿勢の特徴が見えてくるかもしれません。
X脚、O脚、または足裏の偏平足など、下肢に見られる特徴もありますが、ここでは、上肢に見られる特徴的な姿勢のひとつである「猫背姿勢」を例に取り上げます。図1の①「前額面」に対して、前後のバランスを見ます。「猫背姿勢」は骨盤が後傾になり、上体の重さが全て背部と腰部に掛かってしまうことで、背筋痛や腰痛が起こりやすくなります。この姿勢を改善するには、図3のように胸をはり、あごを引くことを意識し、前額面から見たときに耳→肩→大転子→くるぶしの各ポイントが地面に対して垂直な直線上にあるような姿勢を保つよう意識しましょう。

3方向

姿勢

また、図1の②「矢状面」から各部位に対して、左右の柔軟性や筋の太さなどを確認してみましょう※。バランスが崩れている箇所を見つけたら、弱い傾向にある箇所を意識して補強することで、バランスのいい身体を作ることができます。姿勢以外にも、臓器障害(心臓や腎臓)や、貧血の症状がある人もいるでしょう。自分自身で身体の特徴を把握するとともに、専門のドクター、トレーナーなどに相談し、顧問の先生に伝えておくことも大切です。
※競技の特徴を考慮しながらチェックすることが大事です。例えば野球のピッチャーは、右腕と左腕の太さは違うことが多く、柔軟性も左右で差が出ることがります。また、過去のケガが原因で、バランスが崩れていることもあります。

2.自分の体力を知ろう

身体の特徴とあわせて、自分自身の現在の体力を把握することはとても重要です。まずは、学校体育で行われる新体力テストを利用し、基礎的な体力・運動能力を測ると同時に、各部活動で行われる競技種目別テストを行うことで、より競技に特化した能力の測定が可能です。※詳しくは「体力の測定方法」をご覧ください。

3.自分の体重をコントロールできる筋力と調整力を向上させよう

人間は成長とともに、重力に逆らって身体をコントロールできるようになっていきます。寝返り→四つ這い→膝立ち歩き→立つ→歩く→走る→跳ぶという進歩があり、身体を使った遊びやスポーツをするようになります。どの年代でも、自分自身の体重を支え、コントロールできる筋力と調整力(バランス)は必要です。運動からしばらく離れていると、筋力や調整力は低下しています。入部と同時にいきなり激しい練習に参加するのではなく、まずは基礎的なトレーニングから始め、体幹の筋力を強化し、調整力を向上させることを目標に部活動に取り組みましょう。

4.ウォームアップとクールダウンをしっかり行う

当たり前のことですが、ウォームアップとクールダウンをしっかりと行なうことが、ケガを予防し、次の日の準備と疲れを残さないようにするために大変重要なことです。小学校や中学校のスポーツ現場では、ウォームアップはしっかりと行なわれているものの、クールダウンをしっかりと行なわずに練習会場や試合会場を後にしてしまうことが少なくないようです。クールダウンをしっかりと行なわないと疲労回復が行われないだけなく、心臓にも大きな負担がかかります。可能なら15分、少なくても10分のクールダウンを行うことで、ケガを最小限に防ぐことに繋がります。

5.セルフケアを理解しよう

練習後、試合後に疲労や軽度の痛みを取除く為にセルフケアを行いましょう。効果的な方法としては、患部を冷やすアイシングや逆に温めるホットケア、またはマッサージが効果的です。ケガの発生や症状でそれぞれ適用方法は変わりますが、ケガによって起こる炎症反応(熱感、腫れ、痛み、内出血など)が視られる場合は冷やすことを適用し、疲労部位が冷えにより痛みがある場合は温めることをおすすめします。


まずは、身体の特徴と今の体力を把握することが第一です。その上で、特に補強しなければいけない部分を理解し、基礎的な筋力と調整力を向上させることを目指します。さらに、練習前の準備と練習後のケアをしっかり行うことで、ケガを防止するだけでなく、体力や技術を効率よく向上させることにもつながります。充実した部活動を行うためにも、これらの項目を実行して、毎日の練習に励みましょう。