秋はサンマやカツオが旬ですね。この時期の脂がのった魚は、食卓には欠かせない食材のひとつではないでしょうか。
しかし、魚を食べなくなる「魚離れ」が年々加速しています。平成9年から24年までの1人1日当たりの魚介類と肉類の摂取量を比較すると、魚介類の消費量は年々減少しており、18年には肉類の消費量を下回りました。その差は今も拡大する一方です。
なぜ、私たちは魚を食べなくなってしまったのでしょうか?
そこには、「骨があるから食べるのが面倒」という食べる立場からの理由と、「調理や後片付けが面倒」「下処理ができない」という調理する立場からの苦手意識があるようです。
魚に含まれる栄養素
では、なぜ手間のかかる魚を食べるべきなのでしょうか?
魚には、体作りには欠かせない、良質なたんぱく質が多く含まれているだけでなく、健康を維持・増進し、体の調子を整える上でとても有効な成分が豊富に含まれています。下図のように魚には残すところがないくらい、多くの栄養素が含まれているのです。
血管や皮膚をしなやかにする多糖質やビタミンAが豊富です。目の裏側(ゼリー状のところ)には、DHA※2や「かっけ」予防に効果があるビタミンB1が多く含まれています。
カルシウムを中心としたミネラルが豊富で、コラーゲンもたくさん含まれています。骨まで食べられるような小魚を選んだり、じっくり煮込むと骨まで柔らかくなって食べやすくなります。
カルシウムを有効に働かせるビタミンDが豊富です。
体作りに欠かせない、良質なたんぱく質が多く含まれています。
鉄分やタウリンが多く、ビタミンB1は身肉の数倍も多く含まれています。生臭さが苦手な人も、調理方法や味付けを工夫して、ぜひ食べてほしい部位です。
肉の部分よりたくさんのビタミンA、B1が含まれています。黒い皮の魚にはビタミンB2が豊富です。こんがり焼いて、皮ごと食べると美味しくいただけます。
魚に含まれる不飽和脂肪酸とは
肉と魚では、含まれる脂質の種類が違うことをご存知ですか?
脂質を構成する成分に脂肪酸があります。このうち、肉に含まれる脂肪酸を「飽和脂肪酸」といいます。常温で白く固まるのが特徴で、摂りすぎると血液がドロドロになり、生活習慣病の原因にもなってしまいます。一方、魚に含まれるのは「不飽和脂肪酸」です。常温でも固まりにくい性質を持つため、体内で液体として存在しています。
そのため、血液をサラサラにする効果があり、生活習慣病の予防や、脳の活性化にも役立つといわれているのです。
下の図に、脂肪酸の分類を示しました。EPA※1とDHA※2は、魚の脂に含まれる成分で、「多価不飽和脂肪酸」に分類されます。これらは、私たち人間が体内で合成することができないため、食物などから摂取する必要があります。このような脂肪酸を「必須脂肪酸」といいます。
※1 EPA(エイコサペンタエン酸)… いわし・さば・あじなどの青魚に多く含まれる
※2 DHA(ドコサヘキサエン酸)… 青魚、まぐろやかつおに多く含まれる
「食の欧米化」が進み、肉が食卓の中心になるにつれて、脂質の摂取量が増える一方で、EPA、DHAの摂取量は減り続けています。 もう一度、ここで食卓を見直してみてはいかがでしょうか。
調理方法の工夫
骨があって面倒ならば、骨抜きの切り身から始めてみるのもいいかもしれません。どうしても手間を省きたいときは、お刺身を買ってきてしまえば、調理せずに食べられる上、骨もないので食べやすいですね。ちょっとした工夫で、面倒だと思っていた魚との付き合い方が大きく変わるかもしれません。
今回は魚の魅力や簡単な食べ方を紹介してきましたが、主菜となる肉、魚、卵、大豆製品にもそれぞれの良さがあります。「今日の夕食は豚の生姜焼きだから、明日の夕食はサンマの塩焼き」といったように、バランスのよい食事ができるように心がけましょう!