寒い時期は身体が温まりにくいため、夏と同じように準備運動を行っていても思うように身体は動きません。効果的に身体を温め、準備運動の質を高める方法の一つに「ダイナミックフレキシビリティ」があります。
一般的に「柔軟性」とは身体の柔らかさを指す言葉ですが、柔軟性には「静的柔軟性」と「動的柔軟性」の二つの概念があります。「身体が柔らかい・柔軟性が高い」というのは主に「静的柔軟性が高い」ことを指し、静的柔軟性を高める手法を「スタティックストレッチ」といいます。一方、動的柔軟性は、身体の柔らかさに加えて「身体の動きやすさ(動かしやすさ)」を指し、スポーツ選手はこの「動的柔軟性」を高める必要があります。動的柔軟性を高める手段として「ダイナミックフレキシビリティ」が有効です。
ダイナミックフレキシビリティの長所
ダイナミックフレキシビリティは、動きの中で関節の曲げ伸ばしや回旋などを行い、意識的に筋肉を動かして柔軟性を高める方法です。準備運動で積極的に取り入れるべき理由として、ダイナミックフレキシビリティの持つ効果は以下の通りです。
・身体の動きがスムーズになる
・スポーツで要求される様々な動作に応じた種目がある
・怪我を予防する
ダイナミックフレキシビリティは、ただ身体を柔らかくするだけではなく、身体の動きをスムーズにし、練習や試合に100%のコンディションで臨むための準備運動として活用できます。
ダイナミックフレキシビリティの目的
効果的なダイナミックフレキシビリティを行うためには、これらの目的を達成する必要があります。
②筋肉の柔軟性を高め、関節の可動域を広げる
③心拍数を高める
④競技に必要な動作スキルを向上させる
ディスパッチ11月号で筋肉は細い筋線維の集まりであると説明しました。この筋線維が運動によって伸び縮みすることで摩擦熱が発生し、筋温が高まります。
筋肉は温かいほうがより伸びやすく、動かしやすくなり、温められた血液が身体を巡ることで、身体の内側から体温を上げることができます。
温められた筋肉は伸びやすくなる性質があるため、準備運動の始めは大きく身体を動かすよりも、まずはスキップやジョグ、軽い腕回しなどで身体をほぐし、徐々に関節を動かす範囲を広げていきましょう。特に冬の身体が温まりにくい時期は、急激に筋肉を伸ばしたり関節を大きく動かしたりすると怪我にもつながります。ゆっくりと時間をかけて身体を温めていきましょう。
また、単純に身体を大きく動かせば良いということではなく、正しい姿勢やバランスを意識して行うことでトレーニングの質が高まります。よりトレーニングの質を高めていくためには意識性の原則※が適用されます。
トレーニングの目的やトレーニングしている身体の部位を意識することで、トレーニングの効果が高まること。どの筋肉をストレッチしているのか、このストレッチにはどのような効果があるのかを意識することでトレーニングの効果が高まりやすくなります。
寒いときの服装
寒い時期はウェア選びも重要です。風速が1m上がるごとに体感温度が1˚C下がると言われています。身体を温めて運動を行うためには、風の影響をなるべく受けないようにウィンドブレーカーなどの着用が望ましいでしょう。また、ウェアの重ね着も体温を調節するためには重要です。暑くなったら脱いで、寒くなったらすぐに羽織れるようなウェアを選ぶのが良いでしょう。また、手袋やネックウォーマーなどを着用することで、外気に触れる肌の範囲が小さくなり、防寒・保温に効果があります。
主なダイナミックフレキシビリティの種目
目的を正しく理解し正しい動作で行いましょう。