先月号では足関節捻挫の応急処置と保護期のアスリハについて紹介しました。今回は訓練前期、訓練後期、そして復帰期のアスリハについて解説します。
2. 訓練前期:可動域改善、筋力アップ
3. 訓練後期:運動協調性改善、
4. 復帰期 :スピードアップ、瞬発力アップ、種目別シミュレーション
2.訓練前期
捻挫をしてしまった後、足首を動かす運動を行わないと足関節の可動域が狭くなり、柔軟性や筋力の回復が困難になることがあります。腫れが引いたら継続してタオルギャザーなどの可動域訓練を行います。
その後、チェアウォークや座位でのカーフレイズから自体重カーフレイズなどで足関節周囲筋群、足趾伸筋群、屈筋群を鍛えます。また、アジリティディスクなどを使用して不安定な場所に立ち、バランスを取るトレーニングも取り入れます。
3.訓練後期
足関節周囲筋群の筋力が十分に戻ったら、歩行からジョギング、そしてランニングへと移行します。同時にラダートレーニングやニーベントウォークなどを行い、筋力だけでなく、足関節・膝関節・股関節がうまく連動するよう協調性の回復を図ります。また球技においては、基本的なフットワークトレーニングやサークル方向転換なども行います。これはスポーツ復帰をする上で非常に重要なポイントです。
4.復帰期
いよいよチームに合流となる前には、競技動作に合わせたメニューを取り入れます。目安として、以下の動作をできるようにしましょう。ただし、いずれの動きもゆっくりと正確にできるようになってから徐々にスピードを上げていきます。これまでにディスパッチで紹介してきたSAQトレーニングは復帰期のトレーニングにも有効です。また、復帰期まではテーピングを行い再発予防に努めましょう。(テーピング方法はディスパッチVol.102 2015年10月号 ピックアップ参照)
・ダッシュ(直線→S字→ジグザグ→8の字)
・ジャンプ、ホップ、バウンディング
・方向転換(T字、Y字、四角)
・10m四方での鬼ごっこ など
今回紹介したアスリハは、どの競技にも通じるような基本的なメニューです。競技によっては、種目特性を踏まえたメニューも必要になってきますので、専門家に相談して進めるようにしてください。
また、アスリハは必ず「患部外トレーニング」を同時進行で行います。例えば陸上長距離選手であれば、エアロバイクを漕いだり、プールで水中ウォーキングやトレ―ニングをして心肺機能が落ちないようにし、体幹トレーニングも同時に行っていくことが重要です。
ケガをすると仲間との練習に参加できず、暗い気持ちになってしまうかもしれません。しかしそういう時こそ、「ケガをする前より強くなるんだ!」「強くするんだ!」という気持ちでアスリハに取り組んでください。
参考文献
「アスレティックトレーナーテキストⅠ」財団法人日本体育協会
「実践すぐに役立つアスレティックリハビリテーションマニュアル」全日本病院出版会
「スポーツアイシング」大修館書店
「リハナビ」株式会社クレーマージャパン