先月号で下肢の身体アライメントの特徴と、それが原因で起こる外傷や障害をご紹介しました。それではこれらを予防するためには、どのようにコンディショニングを行うのが良いのでしょうか。今回は、前回紹介した「X脚」「O脚」に着目し、これらのアライメントで起こりやすいケガを予防するストレッチや補強トレーニングなど、いくつかの効果的なコンディショニング方法をご紹介します。

ニーイン&トーアウト ニーアウト&トーイン

「X脚」は「ニーイン&トーアウト」、「O脚」は「ニーアウト&トーイン」と呼ばれる下肢の状態で、膝とつま先の相対的な関係で示すことができます。ニーイン&トーアウト(Knee-in&Toe-out)とは、立った姿勢で体重が乗った前脚の膝(knee)が曲がった状態で内側(in)に入り、相対的につま先(toe)が外側(out)を向くことを言います。逆に、ニーアウト&トーイン(Knee-out&Toe-in)とは、膝(knee)が外側(out)を向き、相対的につま先(toe)が内側(in)に入ることを言います。

1612care01

股関節・膝関節・つま先が正しい直線上にあることが、歩く、走る、止まるといった接地動作において、ケガが起こりにくいポイントです。
しかし、股関節・膝関節・つま先が正しい直線上にない状態では、膝と足首から足部には大きな「捻り」のストレスがかかってしまいます。
このような状態で生活やスポーツを行っていると、大きな負担がかかり続けるため、下肢の様々な部位に下表のような症状を引き起こします。

ニーイン&トーアウト、ニーアウト&トーインが原因で発生しやすい代表的な外傷と障害

ニーイン&トーアウト ニーアウト&トーイン
・鵞足炎(がそくえん) ・膝MCL損傷 ・外側半月板損傷
・シンスプリント ・足底腱膜炎 ・外反母趾
・腸脛靭帯炎 ・内側半月板損傷
・足関節内反捻挫 ・内反子趾

それではこれらのアライメントによる動きで、外傷や障害が起こらないようにするためには、何が重要になるのでしょうか?

ストレッチと補強トレーニング

X脚とO脚での傷害予防を行うには、膝関節、足関節の筋力と安定性の強化はもちろん必要です。しかし最も重要なのは、体重を一番支える大きな関節である「股関節」の筋力と安定性です。今回は股関節を中心としたストレッチと補強トレーニングをご紹介します。

股関節を中心としたストレッチ方法
1. 仰向けになり膝関節を90度に曲げ、さらに股関節を90度開きます。おしりが浮かないように右の股関節を外転+外旋に、左の股関節を内転+内旋にゆっくりと息を吐きながら傾けていきます。約5秒ずつ伸ばし、左右それぞれで動作の柔軟性のバランスを確認しながら、交互にストレッチします。10回を1セットとし、これを2セット行います。

1612care02
1612care03

[動画がご覧いただけます]

2. うつ伏せになり両腕で上体が左右に動くのを抑え、右(もしくは左)の腰部から下肢全体をできるだけ遠い逆方向に腰を捻るように持っていきます。15〜20秒呼吸をしながらリラックスして伸ばします。逆側も同じように行い、これを2〜3セット行います。

1612care05
1612care04

[動画がご覧いただけます]

3. 股関節を前後に開き、前側の脚の股関節と膝関節を曲げて上半身を前傾させ、前脚の左右に両手をつきます。最初に両手を外側につき股関節を外転+外旋させて、背中を丸めないように胸を膝からすねに近づけます。15〜20秒伸ばしたら、上体と両手を内側に移動させ、股関節を内転+内旋させて背中を丸めないように上体を両手に近づけていき、15〜20秒伸ばし、これを2〜3セット行います。

1612care06
1612care07

[動画がご覧いただけます]


股関節の柔軟性と片足支持でのバランス強化のトレーニング
股関節の筋力と安定性を強化する自体重トレーニングは多くありますが、今回はバランス強化を目的としたトレーニングをご紹介します。

1. 四股踏み
片足支持でのバランスと股関節の柔軟性の向上を目的とし、相撲の四股踏みを行います。3秒の引上げから始めて5秒まで伸ばします。片足10回を1〜2セット行いましょう。

1612care08-2
1612care09-2

[動画がご覧いただけます]

2. 脚屈曲伸展片足バランス
バランスを崩さないように遊脚で股関節の屈曲と伸展を繰り返します。一回ずつ脚を変えたり、片足を連続で行って難易度を高めていきます。屈曲5秒、伸展5秒でしっかりと静止し、姿勢を確認しながら繰り返します。左右それぞれ10回を1〜2セット行いましょう。

1612care10-2
1612care11-2

[動画がご覧いただけます]

3. 左右移動での静止片足バランス
左右に移動しながら、正しい姿勢(股関節に体重を乗せる)で片足バランスを繰り返します。アライメントも確認しながら、3〜5秒と静止動作の時間を伸ばして難易度を高めていきます。左右それぞれ10回を1〜2セット行いましょう。

1612care12-2
1612care13-2

[動画がご覧いただけます]