新しい生活が始まり、しばらく休んでいた部活動をはりきって再開したとたんに「スネ」に沿ってうずくような痛みが… シーズンの始めや筋力不足の状態で過度な運動をしたときに起こりやすいとされるこのスネの痛みは「シンスプリント」と呼ばれるスポーツ傷害です。始めのうちは運動をやめると痛みは治まるため、我慢して無理を続けてしまう人も多いようですが、悪化すると日常生活動作の中でも痛みが出てくることもあります。痛みが発生する原因や予防法を覚えて、新しい環境での部活動を気持ちよくスタートさせましょう。

シンスプリントとは

ふくらはぎの内側や前外側に痛みが出る症状で、「脛骨過労性骨膜炎けいこつかろうせいこつまくえん」といいます。中学生・高校生に多い慢性傷害で、ふくらはぎの前外側が痛くなるものと、内側に痛みが出るものの2種類がありますが、今回は後者を中心に説明していきます。陸上競技のトラック種目やサッカー、バスケットボール、バレーボールなど、ランニングやジャンプを繰り返す種目で多く見られます。また、運動をあまり行っていなかった新入生が急激に運動量を増やしたときや、合宿などで集中的にトレーニングを行うときにも起こりやすいと言えるでしょう。

痛みが発生する原因

スネの周りには「下腿三頭筋かたいさんとうきん(腓腹筋とヒラメ筋をあわせて下腿三頭筋と呼びます)」「後頸骨筋こうけいこつきん」「足趾屈筋群そくしくっきんぐん※1」などさまざまな筋肉が付着しています。これらは、ランニングやジャンプをする時に、地面を蹴ったり、接地時の衝撃を吸収するために働く筋肉で、この動作をするたびに強く緊張し、スネの骨膜※2を引っ張ります。緊張が強く起こり、繰り返し筋肉が引っ張られると、付着部が微細な損傷を繰り返して炎症を起こしてしまうのです。

筋肉の柔軟性が不十分で、硬くなった状態だと引っ張られる力は強くなり、炎症も起こりやすくなります。また、筋力が不足している状態で過度に繰り返し動作を行ってしまうと、かかる衝撃を受け止められず、筋肉と骨膜の間にストレスがかかり、炎症が起きやすくなることが考えられます。

※1 足の指を曲げる筋群
※2 骨に付着している膜

kinniku

足裏のアーチとの関連

シンスプリントが起こるメカニズムと大きく関係しているのが、足裏のアーチです。
足裏には3つのアーチがあり、運動をするときはもちろん、普段の生活の中でもとても重要な役割を果たしています。

3arch
役割1 体重を支える
石橋のアーチ構造と同じ原理で
大きな重量をしっかり支えます
役割2 バネの役割
重心の移動をスムーズにし
地面の蹴り出しをサポートします
役割3 クッションの役割
接地したときの衝撃を吸収・分散します
arch


このアーチを支えているのが、足裏の筋肉や「後頸骨筋」です。特に「後頸骨筋」は内側縦アーチ(土踏まず)を形成するのに重要な筋肉で、アーチを持ち上げるように働いています。これらの筋力が不足していると、アーチを持ち上げられなくなり、ランニングの接地時に足関節が強く回内かいない(かかとが内倒れする)してしまうことがあります。これを「回内足かいないそく」と呼び、アーチと地面の接触頻度や度合いが高まった結果、アーチが落ちてしまう「扁平足へんぺいそく」の原因となります。
アーチが落ちると、後頸骨筋の起始部が下へ引っ張られてしまい、そこに炎症が起きてしまいます。また、クッションがなくなることで衝撃が吸収できなくなり、筋肉や骨に大きなストレスがかかってしまうのです。

筋力不足、柔軟性不足、回内足や扁平足などの骨の配列の崩れ、またはフォーム不良のように、身体に原因がある場合(身体的要因)とは別に、練習環境や道具に原因がある場合(環境要因)も考えられます。硬いグラウンドや、ソールの薄いシューズでランニングやジャンプを繰り返すと、かかる衝撃は大きくなり、炎症も起こりやすくなります。また、選手の体力に対して、運動量が多すぎる環境もシンスプリントの要因となりうるため、新入生の運動量には特に配慮が必要です。

身体的要因
1.筋力不足
2.柔軟性不足
3.骨の配列の崩れ
4.フォーム不良
環境要因
1.硬いグラウンド(アスファルトなど)
2.ソールの薄いシューズ
3.運動量の過多(選手の体力に対して)