アイシングとは言葉の通り「冷却」することです。ケガをしてしまった時や、練習での身体の疲労を和らげたい時など、スポーツの様々な場面で「アイシング」は重要な役割を果たします。今回はいくつかのアイシング方法について、効果、注意点をご紹介します。
アイシングを行う目的
スポーツの現場で行われるアイシングは2つに大別できます。
1. 応急処置におけるアイシング
スポーツの現場で突発的に起こるケガとして、捻挫、筋挫傷、打撲、脱臼、骨折などがあります。これらのケガの多くに対応できる応急処置の基本が「RICE処置」です。
Ice(冷却)
Compression(圧迫)
Elevation(挙上)
患部を冷やすことは、RICEの4つの処置の中で最も重要です。冷やすことで、患部に起こる腫れや内出血を最小限に抑え、損傷の拡大を防いで回復を早めます。また、麻酔効果により痛みを軽減させ、筋の興奮を抑制して緊張を軽減させる効果もあります。
※RICE処置はあくまで「応急処置」であり「治療」ではありません。RICE処置の後は必ず整形外科医かスポーツ医を受診しましょう。
2. 運動の効果を高めるアイシング
アイシングは、繰り返し身体を動かすことで発生した炎症の早期回復に非常に有効です。患部を冷却すると、一時的に血管が収縮します。アイシングを終えると、今まで収縮していた血管が拡張し、細胞組織に多量の血液が流れることで、疲労の原因となる乳酸や老廃物が除去され、結果として疲労回復が早まります。
アイシングの方法
これまでのディスパッチでもいくつかの方法をご紹介してきましたが、今回はまだ紹介をしていないアイシング方法を写真を加えながら説明していきましょう。
1. アイスマッサージ
冷却材を疲労した部位や痛みのある部位に当て、さすりながらマッサージを行います。
氷のうかビニール袋で行う場合には、マッサージによる氷の「遊び」を作るために、氷:水を7:3か6:4で作ります。
その他、製氷機で作った氷(アイスキューブ)や、紙コップを使ったアイスカップで行う方法もあります。氷を直接皮膚に当てるため、短時間で患部を冷却できる利点がありますが、一点に止めすぎないよう注意しましょう。
2. アイスバス
冷やしたい部位が浸かる程度の水を入れ、氷を加えて水温を10〜15˚Cに調整し、10〜15分入ります。大きめのポリバケツやボックスを利用すると、場所を選ばずに、練習後すぐに入ることができます。可能な場合は浴槽を使用すると、さらに短時間で効率良く施すことができます。
3. アイスウォーター
家庭用の保冷剤を冷水に浸し、冷水温度を下げることに使用します。これにより、冷水の温度を低く保つことができます。
アイシングを行う際の注意点
アイシングを行う際に注意しなければならないのが「凍傷」です。アイシングを行う際は、凍傷を起こさないように皮膚の色と感覚を確認しながら行いましょう。
アイシングで使う冷却材は、冷たければ良いというわけではありません。冷凍庫の氷は、0˚C以下で貯蔵されているため、出した直後は霜が付着しており、短時間でも凍傷になる可能性があります。冷凍庫で冷やされたもの(氷、フレキシコールド、保冷材など)を直接使用する場合は、冷凍庫外の空気に2〜3分さらして温度を上げて使用するか、「3.アイスウォーター」で紹介したように、保冷剤を冷水に浸し、患部にその冷水を当てて使用しましょう。また、氷と皮膚の間に濡れたタオルを挟むことでも凍傷を防ぐことができます。
冷却する時間についても注意が必要です。一般的に、冷やす時間は約15〜20分と言われていますが、この時間は冷やす部位や個人の感覚によって異なります。大事なのは「感覚が麻痺した状態」で終了するということです。凍傷を防ぐために温度が低すぎるものは使わないことと、30分以上連続で冷やさないように注意してください。
参考文献:
「スポーツアイシング」大修館書店
「リカバリー ~アスリートの疲労回復のために~」有限会社ナップ