過ごしやすい春が終わると、夏に向けて徐々に気温が上がるとともに梅雨がやってきます。この時期の屋内トレーニングを充実させるヒントとして、ディスパッチVol.111(2016年7月号)では主に基礎体力を向上させるメニューを紹介しました。競技パフォーマンスを高めるためには、土台となる基礎体力の向上はもちろんのこと、それらの体力要素を競技で必要とされる「動き」に繋げるためのトレーニングを行わなければなりません。(ディスパッチVol.114 2016年10月号参照)
今回は、屋内トレーニングのコンディショニング編として、限られたスペースの中でもできる、加速や方向転換などのSAQトレーニングをご紹介します。
トレーニング実践
今回ご紹介するトレーニングは、「その場→移動」、「1方向→多方向・方向転換」、「プログラムされた動き→ランダムな動き」というように漸進性を考慮して段階的に負荷を変化させています。トレーニングの内容は、競技特性や各ポジションの特徴、選手の能力に合わせて、様々な方法へと変化をさせることが可能です。段階的にトレーニングを進めていく中で、難易度や負荷を調整しながら行いましょう。
また、一つ一つの動きを丁寧に取り組むとともに、スポーツの動きのリハーサルという意識を持って行いましょう。
1.ウォールドリル
スピードトレーニングの中でも、特に加速局面の姿勢の保持や走動作の獲得を目的にしたトレーニングです。
a.壁に手をつき、地面をしっかり押すイメージで踵は少し浮かせます。頭から踵までが一直線になるよう姿勢を保持します。
b.片方どちらかの脚を上げます。腿からつま先で「Z」の形ができるように、つま先を引き上げ、踵は腿の中央の下にくるようにしましょう。膝だけの動きにならないように股関節を使って動かします。
c.壁を押し出していくようなイメージで地面を押しながら、左右の脚を入れ替えます。膝やつま先が外に開いたガニ股にならないように注意します。
d.ゆっくりとした動きから始めて姿勢、動きを確認し、徐々に脚を入れ替えるスピードを上げてみましょう。
2.4方向スタート
パワーポジションの姿勢から、前方、左右、後方へとスタートします。
地面を押してスタートするとともに、1のウォールドリルの姿勢を確認して、スタート時の姿勢で背中が丸くなったり、接地でブレーキをかけないように注意しましょう。
3.2点間ドリル
前方へダッシュで移動し、後方へはバックランで移動します。加速〜減速〜方向転換〜加速…の一連の流れがスムーズになるよう、方向転換時のバランスや姿勢が崩れてしまわないように注意しましょう。
※移動は、ダッシュ、サイドステップ、バックランなど様々な動きを組み合わせて行うことができ、方向転換の動作もターンやスピンなどスポーツの動きに合わせてアレンジできます。
4.2点間ドリル→リアクション
選手は2点間をダッシュ、バックラン(またはサイドステップ)で移動し、指示者の合図に合わせて方向を切り換えます。
音や声を使った聴覚刺激、手やボールなどを使った視覚刺激、またはそれらを組み合わせたりと、それぞれの競技でどのような刺激に反応して動くのかを考慮して行いましょう。
コンディショニングトレーニングは、それぞれの競技やポジションに必要な体力要素や動きを理解し、目的と方法を合わせたトレーニングを行うことが重要です。また、安全にトレーニングを行うためにも、まずは自分でコントロールできる動き、スピードから始めるとともに、トレーニングを行う環境(地面や周りの障害物、器具の管理など)にも気を配って実践しましょう。