周りにこんな選手はいませんか?同じ練習をしても疲れにくい選手、滅多に風邪をひかない選手、怪我をしにくい選手、大舞台でもいつも通り力を発揮できる選手。このような強い選手は何が違うのでしょうか? 今回は「腸」に注目してみましょう。強い選手は、「腸が強い」選手であることが多いようです。腸内環境の状態は一人ひとり異なりますが、心身の状態が変化したときでも、腸のコンディションを常に維持できることが、いつも通りのパフォーマンスを発揮することに繋がります。

目次
心身の状態が胃腸に及ぼす影響
腸を強くするためにはどうすればいい?
「アスリート菌」が存在する?
「アスリート菌」は特別なものか?
これからのキーワードは「MACs」
これぞジュニアアスリート晩ご飯!
~これで決まり!今夜は腸の調子を整えるレシピ~

心身の状態が胃腸に及ぼす影響

トレーニングの後は、筋肉だけでなく、消化器系(胃腸)にもダメージが及びます。胃腸の機能が低下している状態では、十分な食事を摂っていても栄養素を消化吸収する力が弱くなっています。つまり、腸のコンディションが悪ければ、筋肉へのエネルギー補給が追いつかず、パフォーマンスの低下や、疲労が抜けない、体調を崩す、怪我をする等のケースにつながるのです。
また、大きな大会の前や環境が変わったときなど、緊張やストレスによって、本来の力が発揮できなくなることもあります。これも腸内環境のコンディションが影響を与えている可能性があります。

腸を強くするためにはどうすればいい?

腸のコンディションを整えるためにするべきことは「バランス良く食べること」そして「しっかりと食べること」です。
好きだから、食べやすいからといって偏ったものばかりを食べていたり、甘いお菓子や、スナック菓子で満たされた腸では、良いコンディションは作れません。腸内環境は2週間で変化すると言われています。できそうなポイントから挑戦してみましょう。

【セルフチェックシート】
●ヨーグルトを1日1回以上摂る(□乳酸菌、□ビフィズス菌)
●発酵食品を1日1回以上摂る(□納豆、□漬物、□味噌汁)
●果物を1日3回摂る(□バナナ、□リンゴ、□柑橘類)
●海藻類(わかめ、昆布、ひじき)を1日3回摂る
●イモ類、豆類を1日3回摂る
●白米以外の穀類を1日3回摂る(□雑穀、□玄米)

「アスリート菌」が存在する?

スポーツ選手の腸内を調べた結果、「アスリート菌」があるという研究が話題を呼んでいます。プロラグビー選手の腸内細菌の種類は、一般人よりも2倍多かったという海外の報告もあります(Gut. 2018 Apr;67(4):625-633)。プロラグビー選手は日々激しいトレーニングを行っているため、筋肉や組織へのダメージが大きいはずですが、炎症*1がそれほど起きていませんでした。スポーツ選手の腸内環境では、筋肉の修復や増強に役立つ代謝産物(短鎖脂肪酸*2)をたくさん出す仕組みが備わっていることがわかりつつあります。

*1この場合の炎症はクレアチンキナーゼの値が高い状態を指します。
*2腸内環境を良好に保つのに役立つほか、炎症を抑える、肝臓や筋肉のエネルギー産生を促すなどの効用が知られています。

「アスリート菌」は特別なものか?

一流のアスリートたちが大舞台で最高のパフォーマンスを発揮できるのは、決して贅沢で高価なものを食べているからではありません。バランスの良い食事を1日3回食べることを365日欠かさず続けるという、当たり前のことを行っているだけです。そしてセルフチェックの内容にあるように「納豆や漬け物、ヨーグルトなどの発酵食品を1日に何種類か摂ること」、「野菜、穀物、豆類など、食物繊維が豊富な食材をしっかり食べること」を欠かしません。「アスリート菌」は決して特別なものではありません。腸内細菌も“鍛えられ”、パフォーマンスアップにつながるような代謝の流れができていくのです。

これからのキーワードは「MACs」

MACs(マックス)とは「腸内細菌に届く炭水化物」で、アスリートのコンディショニングとして新しいキーワードです。腸内細菌により良い働きをしてもらうには、この3つがポイントです。

①腸内細菌の“エサ”を変えること
 (●★の食材)
②腸内環境を掃除すること
 (▲の食材)
③腸内細菌のバランスを整えること
 (▲●★の食材)

MACsが腸内細菌のエサになり、短鎖脂肪酸が産生されます。この流れがアスリートの腸を鍛えてくれます。便秘ぎみ、太りやすい、冷え症に悩んでいる…… そんな方も注目!! アスリートだけではなく、先生方やご家族でもぜひ取り組んでみてください。
*Microbiota accessible carbohydrates : Nature. 2016 January 14; 529(7585): 212–215

主食のご飯を減らすことはナンセンス。脂肪燃焼を促す、食欲を抑制するといった働きもあるため、穀類グループの食物繊維の取り入れ方を見直しましょう。
食事量が増えるため、消化する力も高めます。白米とあわせて雑穀米や玄米を取り入れましょう。ファストフードや油の多い食事に頼りがちになっていませんか? 腸内細菌によって代謝されると有害物質に変化する成分が含まれているため注意しましょう。

これぞジュニアアスリート晩ご飯!
~これで決まり!今夜は腸の調子を整えるレシピ~

もちふわつくね

材料(2人分)
・鶏むねひき肉 160g
・焼麩(やきふ) 10g
・もち麦(大麦) 20g
・枝豆(冷凍) 20g
・干しひじき 4g
・長ネギ 1/2本
・おろし生姜(チューブ) 小さじ1
・塩 小さじ1/2
(タレ)・しょうゆ 小さじ2
   ・砂糖 小さじ1
   ・みりん 小さじ1/2
   ・かつおだし 50ml
・片栗粉 小さじ1

作り方
* オーブンを180˚Cに余熱する。

  1. 鍋に湯を沸かし、もち麦を15分ほど茹で、水で洗い冷ます。
  2. 焼麩と干しひじきはそれぞれ水につけて戻し、水気を取る。
  3. 枝豆は熱湯で茹で、湯を切る。
  4. 長ネギはみじん切りにする。
  5. ボールにひき肉、1〜4、しょうが、塩を入れ、よくこねて楕円形に形を整える。
  6. 5を180˚Cのオーブンで15分焼く。
  7. 鍋に(タレ)の調味料を入れ、煮立てる。片栗粉でとろみをつける。
  8. 皿に盛り付け完成!

かぶとエビのガーリック炒め

材料(2人分)
・むきエビ(解凍) 80g(6尾)
・かぶ 2株
・にんにく 1片
・オリーブオイル 小さじ1
・コンソメ 小さじ1
・酒 小さじ1
・コショウ 少々

作り方

  1. エビは流水で解凍しておく。
  2. かぶの丸い根の部分は皮をむいて8等分に、葉は3cm幅に切る。にんにくは薄切りにする。
  3. フライパンを温めオリーブオイルをしき、2を入れて炒める。
  4. 1のエビと、コンソメ、酒を加え、火が通るまで蓋をして蒸す。
  5. コショウで味を調えたら完成!

にんにくに多いのが「イヌリン」で、カルシウムの吸収を促進する働きがあります。怪我やリハビリ中は特に、マックスとあわせて取り入れ、腸から丈夫な身体作りをしましょう!



vol135 ディスパッチ
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