今年の夏は、熱中症対策が重要です! 新型コロナウイルスの影響で活動自粛により、暑さへ慣れていない状態での運動や、マスク着用によって高体温になりやすいといったことが熱中症のリスクを高めると言われています。そのような状況を踏まえ、今回は夏本番に向けて心配となる熱中症を予防するための「クーリング」と、重篤な熱中症を発症した場合の応急処置について解説していきます。クーリングの目的と効果を整理しながら実践しましょう!

目次
熱中症を予防するためのクーリング
冷却部位を考慮して効果的なクーリングを行う!
冷却方法×タイミング×冷却時間を考慮して効果的なクーリングを行う!
重篤な熱中症が発症した場合の応急処置

熱中症を予防するためのクーリング

ポイント①
運動前には「プレクーリング」!

「プレクーリング」とは、運動前に行う身体冷却の方法で、スポーツ時に起こる体温上昇と暑熱環境下での運動により引き起こされる高体温、疲労、運動能力の低下、熱中症などの身体のコンディション不良を防ぐために行います。
深部体温※1(特に直腸温)が約40˚Cになると運動が続けられなくなるため、あらかじめ運動前に体温を低下させておくことにより、運動開始から深部体温が約40˚Cに達するまでの時間を延長できます。これにより、運動を持続することができ、パフォーマンスの向上や熱中症の予防が期待できます。

※1 深部体温 …… 環境温度の影響を受けにくい心臓や脳などの身体深部の温度

冷却部位を考慮して効果的なクーリングを行う!

ポイント②
手や足裏の「末梢部位」を冷やすことで、運動の持続時間がUP!

身体の「末梢部位」はいわばラジエーターのようなものです。
この末梢部位で冷やされた血液が体の中心に戻ることで深部体温が下がり、その効果として、運動の持続時間が延長すると言われています。

効果的なクーリング方法

  1. 約10〜15˚Cの冷水や冷たいもので5〜10分程度、手のひらと足裏を冷やすと効果的!
  2. 運動前(プレクーリング)、運動中、運動後、運動間(ハーフタイムや休憩時間)にも実施すると効果的!
  3. 冷たすぎる氷や氷水を使用すると身体が冷えすぎでしまうので、気温や湿度の高さを考慮して実施しましょう!

冷却方法×タイミング×冷却時間を考慮して効果的なクーリングを行う!

ポイント③
「冷却方法」×「タイミング」×「冷却時間」の3つの変数によって冷却効果が異なる!

暑熱環境下での運動時は積極的に身体冷却を実施しましょう。3つの変数を考慮して、現場で実施可能な冷却方法を選択したり、組み合わせて冷却効果を高めましょう!
ディスパッチVol.87 2014 7月号「熱中症の症状と水分補給」も併せてご覧ください。

重篤な熱中症が発症した場合の応急処置

いつ熱中症が発症しても対応できるように、緊急時対応計画を練り、処置物品の準備や、対応のシミュレーションを行いましょう。もし、重篤な熱中症が発症した場合には、直ちに身体を冷却し、救急隊の到着を待ちましょう。
熱中症救急処置チャートはこちらからご覧いただけます。

参考文献
① 公益財団法人 日本スポーツ協会:スポーツ活動中の熱中症予防ガイドブック(2019)
② 独立行政法人 日本スポーツ振興センター、国立スポーツ科学センター:競技者のための暑熱対策ガイドブック(2017)



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