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■シリーズ:トレーナーって何?
その1
・どこで何をするのがトレーナーなのか
・どういう知識・技術が必要なのか
・ケーススタディ・国際武道大学 学内トレーナー制度
・体育大学は最も実践的なトレーナーの訓練所
トレーナーという仕事が注目されるようになり、高校生の中にも「将来はトレーナーになりたい」という希望を持つ人も多くなってきた。トレーナーとはいったいどのような仕事をこなす人物なのか、どのような知識、技術が必要なのか、どこでそれを学べるのか・・・。トレーナーについて、抽象的な概念を説明するより具体的な例を見ながら解説していこう。ここでは国際武道大学で進められている「学内トレーナー育成システム」をケーススタディとして取り上げる。
■なぜ学内トレーナーなのか
体育系の大学ではほとんどの学生が競技スポーツ(クラブ活動)に関わる。当然、ケガをする選手が多い。まず第一に、そうしたケガをしにくい体づくりを積極的に進めていかなければならない。しかし残念ながら、大学に限らず、日本に傷害予防とリハビリなどのトレーニングの専門知識をもっている人は少ない。そこで、ケガをしにくい、競技スポーツに適した体づくりをするために、スポーツ医学の専門家が必要になる。
アメリカでは、そういう専門家が基本的には大学ごとに専任者として存在する。また、そのトレーナーの指導のもと、学生トレーナーがアシスタントとして活動している。しかし、日本ではそういう体制がまだまだ整っていない。国際武道大学では、アメリカの体制に準じて、学内で学生トレーナーを育てながら、各クラブのケガの予防に取り組んでいる。
■けがの予防・リハビリにかかわる仕事
トレーナーはまず、ケガをする前の「予防」に気を配らねばならない。トレーニングをして強い体をつくることも、予防の一つだ。ネンザなどを防止するため主に、テーピングを実施するのも予防の仕事の一つ。テープも足首、手首などさまざまな場所に適切に巻かねばならない。またテーピングは、事前の予防の他、一度ケガした部分が再び痛まないように、再発防止として行なうものもある。
きちんとウォームアップをしたり、ストレッチングをしたりというのも、ケガの防止に関わることである。これらの正しい方法を理解し、時と場所と状況に応じて選手に指導していくのもトレーナーの役目である。これも、元気な選手、ケガの回復から間もない選手によって、用いる方法が違ってくる。
ケガが治った選手が、以前のように活動できるよう、リハビリのトレーニングを実施するのもトレーナーの仕事である。リハビリトレーニングはケガをした部位、回復の程度によって強度や方法を変えていかねばならない。時には長期間、医者に診てもらわねばならないょうなケガをする時もある。その場合、トレーナーはケガをした選手と医者のパイプ役となる。次にドクターに会うときには選手のリハビリの進み具合を的確に報告する。国際武道大学では週に1回、スポーツドクターが訪れることになっている。
■誰がトレーナーになり、どう学ぶのか
国際武道大学では、各クラブに必ず1名、学生トレーナーをおくことにしている。学生トレーナーはまず、4月に「学生トレーナー講習会」に参加し、基本的な活動について学ぶ。その後は月2回、定期的な勉強会に参加し、必要な知識と技術を身に付けていく。もちろん、体育大の学生であるから、授業そのものがある程度の基礎知識になる。
しかしだからといって、すぐにケガの処置や適切なトレーニングについて知識と技術を駆使できるわけではない。むしろ、実際にはどう行動したらいいか迷うことのほうが多い。そうした点については随時、活動の中心となっている山本利春先生が指導してくれる。放課後の健康管理室、トレーナールームがその舞台だ。この場所で学生は、毎日、実践的な力を高めていく。
こうした各クラブ内で活動している学生トレーナーを含め約40%の学生が、山本先生のゼミナール「コンディショニング科学」を専攻し、活動のリーダー的存存となっている。彼らはまさに、トレーナー活動を学ぶことが専攻なのである。トレーナー活動の主な役割は、選手の身体をよい状態にするためにあらゆる手段を駆使すること。それを科学的な裏づけを持って適切に実施することから「コンディショニング科学」という専攻名になっている。
■国際武道大学で活動する意味
学生たちが国際武道大学の学内で、山本先生を中心にトレーナー活動を学び、実践していく意味は大きい。それは、国際武道大にはトレーニング、ケガ、リハビリという、トレーナーと密接に関係する仕事の必要性が日常的にあるからである。
トレーナーの仕事に、理論的、学問的な基礎は絶対に欠かせない。しかし、それ以上に必要なのは、知識・技術を実際に駆使する経験である。その意味で、毎日のようにトレーニング、ケガの処置、復帰のためのリハビリをこなさねばならない体育大学の環境は、トレーナーの育成には最適の環境といえる。トレーナーを必要とされている場所で必要とされている仕事を学んでいるのが、学生トレーナーなのである。
次回は、具体的な活動の内容、卒業後の進路などについて紹介しよう。
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